私自身のバンド経歴を振り返ってみると、大きくは大学生時代と社会人時代に分かれます。
大学生時代は、コピーバンドを中心にした活動でしたが、ある種、青臭いまでの若さを売りに、とにかくがむしゃらに動き回っていた記憶があります。
その後、社会人になってしばらく、バンド活動からは引いていたのですが、ふと学生時代の旧友と再会して音楽の話になって一念発起、社会人の立場でバンド活動を再開するに至りました。
そのときに気づかされたのが、「社会人経験って、バンド活動にメチャクチャ活きるよ!」ってこと。今回の記事では、そうした私の経験を踏まえ、社会人がバンド活動に取り組む強みについて考察してみようと思います。
- 社会人のどのような経験がバンド活動に活きるか教えてほしい
- マーケティングの知識とバンド活動の関係を整理してほしい
- 文章力・ビジネスマナーがバンド活動に活きる局面を知りたい
- バンドの会計と経理事務の関係を教えてほしい
もくじ
バンド活動のサイクル
バンド活動の目標をどこに置くかというのは、プロ志向なのかアマチュアとして楽しく活動するのかによって大きく分かれますが、少なくとも
- 練習を重ねる
- バンドのPRをする
- ライブをする
- ファンを増やす
- 活動のスケールを大きくする
…という一連のサイクルを回しながら活動を続けると言う点においては、大きな違いはないと言って良いでしょう。
それでは、この一連のサイクルの中で、具体的にどのようなフェーズにおいて社会人経験が活きてくるのか、順を追って解説していきましょう。
バンドPRの戦略は広報・マーケティングに通じる
まず、多くのバンドが一生懸命取り組んでいるであろう、バンド活動のPR。
おそらく、多くの人が、Twitterを使ってライブの告知などを行い、フォロワーさんへの情報伝達を行っているのではないかと思います。
でも、それだけで、PRとして、足りてますか?
まず、あなたのバンドは、どのようなお客さまをメインターゲットとしているのか。そして、その層にはどのような情報が心に刺さり、「ライブへ行ってみよう」という誘因になるのか…。
このあたりのこと、PRのときに考えているバンドさん、果たしてどれくらいいるでしょうか。少なくとも私が個人的にフォローしている多くのバンドさんは、ホントに淡々とライブ告知を発信しているだけのような気がします。
このあたり、仕事で広報やマーケティングを担当することになると、いろんなことを考えながら取り組むようになります。以下、そのエッセンスです。
まずはメインターゲットを見定めよう
自分たちのバンド活動が、どのような層に受けるのか。
たとえば、有名バンドのコピーであれば、コピー元のバンドさんのファン、あるいはそのジャンルを好む人がメインターゲットになるのではないかと思います。たとえば、L’Arc~en~Cielのコピバンということになれば、ラルクファンはもちろん、これと同時期に活躍したバンドを愛する方々もターゲットになり得ると思います。
また、オリジナル曲を演奏する場合、そのオリジナル曲のジャンルによってファン層も決まってくることでしょう。ナチュラルなポップス系バンドなら20~30代の女性層、往年のハードロックであれば40代の男性、などといったイメージでしょうか。(もちろん、あくまで一般論としてのターゲッティングの話にすぎません。念のため)
また、アコギなどを手に、弾き語りスタイルで活動する女性シンガーソングライターの場合、普通に活動している限り、良くも悪くも、多くの男性ファンを得ることができるでしょう。
このように、バンド活動に取り組む上において、自分たちのファンになってくださる方のメインターゲットを見定めることは、PR戦略において非常に重要です。そして、ひいてはバンドのマーケティング的な戦略においても意味のあるものになること間違いなししです。
メインターゲットに「刺さる」ツイートで心をつかむ
そして、バンドのメインターゲットを見定めたら、次はその層に「刺さる」ツイートを、ライブ告知と合わせて展開していきます。
たとえば、ナチュラル指向のバンドを好む20~30代の女性層であれば、おそらく日々の活動報告も、肩の力を抜いた、自然体のものが好まれることでしょう。ですので、適度に日常感のあるツイートを織り交ぜれば、きっとファンの方が親近感を覚え、ライブに行ってみたいと思わせるきっかけになるのではないでしょうか。
逆に、ハードロック系のバンドについては、過度にプライベートを明らかにせず、神秘的な雰囲気を残している方が、ファンの方に魅力的に感じていただける要素が強まると思います。実際、プロでもこの手のバンドさんは、あまりプライベートを明らかにしないことが多いですよね。そういうミステリアスな感じが、「ライブで直接会ってみたい」というふうに思わせるきっかけになり得る、ということです。
炎上リスク対策も社会人経験が活きる
TwitterなどのSNSを使っていると、どうしても気になるのが炎上リスク。
このあたりも、若いバンドさんを中心に、不用意な投稿をして炎上し、それが拡散してしまうとか、あるいはそこまで行かなくても、多くの人からそっとフォロー解除されてしまったり、なんてことはよくある話です。
このあたりも、社会人の経験があると、自ずと炎上リスクのある投稿を察知できるようになります。
私は、社会人と学生の何が違うかというと、「組織に属しているか否か」だと思っています。
つまり、「自分の言動が『組織を代表する言動だ』と思われるリスク」というのを身にしみて分かっているか、という視点での検討ができるかどうかです。
この視点があると、たとえば、次のような注意点をはらむ投稿は、自ずと手控えるようになるはずです。
- 特定の人・物・組織をいたずらに攻撃する投稿
- 不謹慎な投稿、一定の層に不快な思いをさせる投稿
- 世論の賛否が大きく分かれる事案に関する投稿(特に政治・宗教)
- 人権意識を欠いた投稿
「え、そんなん、社会人じゃなくても、一般常識の範囲内において当たり前じゃないの?」と思われたアナタ。そう、その感覚は正しいです。
でも、「多少トガっている方が、バンドらしくていーじゃん」と思っている若いバンドさんが思いの外多く、そしてそんな皆さんがSNS炎上で手痛い目に遭っている姿を少なからず目撃している私としては、このあたりをきちんと管理できる社会人の目線というのは、非常に重要ではないかな、と思う次第です。
言うべきことは言う、ただし「副作用」も理解して
ある程度規模の大きいバンドさんだと、ファンが暴走したり、他のバンドさんやライブハウスさんなどとウェブ上で議論が白熱したりするようなこともあります。
こういうときは「嵐が過ぎ去るのを待つ」というのが一つの定石ではあるのですが、一方で「言いたいことはしっかりと言わないと」という考え方を取る方もいらっしゃると思います。もちろんそれはそれで大事なことです。
ただ、正論は時に嵐を大きくします。その大きくなった嵐と対峙できるかどうかも含めて、言いたいことを言うべきか否かを慎重に検討されることをオススメします。
そして、その結果として「言いたいことを言うことが必要だ」と判断されるのあれば、その判断は非常に重く受け止めないといけないんだと思います。
なお、正論を延々と振りかざし続けてるアカウントは、一般論としてフォロワー減のリスクを伴います。ですので、引き際も大事、ということですね。
女性シンガーは「SSWおじさん」対策も
最近、ネットでバズった「SSWおじさん」。妙齢の男性が、ソロのシンガーソングライタースタイルの女性とライブで知り合ってファンになり、その後おせっかいなアドバイスを執拗に繰り返すなど、ありがた迷惑な存在…といったような文脈で語られていました。
これに限らず、特に女性ミュージシャンの方は、ファンがしつこくつきまとうリスクを抱えており、そのリスクはSNSにおいても発生しうる、という状況です。
この点、SNSにおいては、プロフィール欄において「DMは見ません」とか「リプは返信しません」などと宣言することで、予防線を張り、SSWおじさんをはじめとする「距離を置きたいファン」との間にバリアを作っている方も多々おられます。
もちろん、これはこれで非常に大事なことだと思うのですが、社会人目線では同時にこの予防線が「ファンとは距離を取っています」というメッセージ性をもって伝わるリスクも、懸念要素として感じます。
ファンと適度な距離をとりつつ、距離を取っている旨をファンに知られたくない…難しい悩みですよね。でも、女性SSWの方にとっては、非常に切実な課題です。何とかしなければなりません。
ではどうすれば良いか。DMを初めから受け取らない設定にしておくとか、リプは返信しないスタイルを徹底しておけば良いのです。DMのアイコンがなければそもそも返信の有無でもめることはありませんし、女性SSWならリプの返信を放置してもTLはそれなりに賑わいます。
これで、プロフィール欄から「冷たい」感を消しつつ、自らの身を守ることができるというわけですね。
なお、チケットの取り置きに関する事務連絡については、TwitterのDMではなく、Gmailなどのメールで行うのも一手です。メールだと心理的に一手間増えますが、その分、安易な連絡が来なくなりますので、心理的にはだいぶ楽になりますよ。
ライブハウスとの連絡調整で活きる文章力、ビジネスマナー
文字どおり、バンドの活動舞台である、ライブハウス。このライブハウスとの付き合い方も、社会人の知識・経験が活きるところです。
申し込みメールはビジネスマナーにのっとって
バンド活動は、このライブハウスに出場を申し込むことで、ライブの第一歩を踏み出します。これは、先方からオファーをいただけるなど、よほど関係の出来上がったライブハウスでもない限り、多くのバンドさんにとって共通事項だと思います。
このライブハウスへの出場申し込み、最近はメールやウェブ上の応募フォームから申し込んだりすることも多いと思います。
さて、そのとき、皆さん、ちゃんとしたメールを書けていますか?
言うまでもありませんが、メールであっても、きちんとした文章を書けているか否かは、受け取る人の心証に大きく影響します。まずはメール本文を、失礼のないように、正しい日本語で、しっかりと書くことが重要です。
以下は、一般的なビジネスマナーを踏まえながらライブハウスに出場申し込みを行うメール本文のサンプルです。
メール本文サンプル
—–
ライブハウス○○ ご担当者 様
お世話になっております。
××で活動しているバンド「☆☆」の
かとうたかこ と申します。
このたび、貴ライブハウスのイベント「△△」に
出場いたしたく、別添の音源とともに申し込みます。
以下、必要事項を記します。
(中略)
よろしくご検討くださいますよう、お願いいたします。
—-
かとう たかこ
(メールアドレス)
(電話番号)
(バンドのSNSなどのURL)
—–
メール本文のポイント
私が上記に掲げたメール本文のポイントは、次のとおりです。
- メール冒頭は「宛先」の肩書きを書く。不明な場合「ご担当者 様」で可。
- その次に、自分の所属(バンド名)、氏名を名乗る。
- 「別添の音源とともに」と、添付ファイルがある旨を本文で宣言する。
- 締めで「よろしくご検討くださいますよう」などのご挨拶
- 最後に「署名」、ここにはメールアドレス、電話番号を記す。必要に応じてURLも。
このあたり、ビジネスメールに慣れていれば、どうってことないのですが、私の過去を含め、これらをしっかりこなせる若い方は少ないかもしれません。
もちろん、最終的には音源のデキでライブハウスの選考が行われるのは言うまでもありませんが、ライブハウスのスタッフさんだって社会人。ならば、その社会人の方に理解される「お作法」をきっちり理解してエントリーした方が、好印象に決まっています。
バンドの会計も社会人ならでは
バンド活動に関するお金の管理も、バンドメンバーの中には苦手とされている方もいることでしょう。
これらの管理も、バンドメンバーの中に経理事務経験者がいると、だいぶ楽になりますし、そしてしっかりとやってくれます。
通常、よほどのことがない限り、バンドの経理に簿記の資格などは要りませんが(貸借対照表が必要なバンドなんて、そうないでしょうし)、常日頃から経理事務を通じて数値慣れしており、Excelを自在に操れる程度のスキルがあれば、バンドの会計においては必要にして十分な戦力になれるでしょう。
経理に長けたメンバーがいると、日々の出納整理もさることながら、バンドの資金計画における中長期的な見通しも立てられるようになります。チケットの売り上げやグッズ販売の収入と、チケットノルマやグッズの原価などを積算して、バンドが経済的に持続可能かどうかを分析できる、というわけですね。
ちなみに、このブログの論旨からすると逆説的になりますが、これらの経験、学生のうちに積んでおくと、社会人になってから役に立つこと間違いなしです。
まとめ…社会人経験を活かして、バンド活動に取り組もう!
私自身の経験を振り返ってみて思うのですが、バンド活動を行う上で、社会人というのは不利な点も多いです。仕事が忙しく、練習の日程調整が難しい、まとまった活動ができずストレスになる、特に多忙な時期は個人練習もままならない…。
ただ一方で、前述したように、社会人には、社会人だからこそ経験できる、大人のビジネススキル・マナーといった武器があります。
バンド活動は、音楽活動であると同時に、経済活動でもあります。その「経済活動」の面において、社会人は学生や音楽一筋のプロにはない、豊富なノウハウがあるのです。
そうした社会人の強みを活かしながら、音楽活動にも限られた時間の中で一生懸命取り組み、社会人バンドとして花開くグループが出てきたら、私は、こんなに嬉しいことはありません。
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