ギタリスト・かとうたかこの音楽ブログ

楽器レビューのほか、音楽をテーマにブログを書いています。

メーカー、楽器屋、プレイヤー…ギター人口を減らさないために私たちができること

最近、楽器屋の店員さんやギター仲間と話をしていると、よくこんな話題が出てきます。

 

最近、ギターを弾く人、減ったよなあ…

 

なるほど、確かに私たちの世代ですと、ヒットチャートを著名なバンドが席巻し、彼・彼女らがリリースするCDは軒並みミリオンヒット。そしてその頃に多感な思春期を過ごした私たちは「自分たちも、あんなふうに格好良くバンドをやってみたい」と夢見て、ギターやベースを手にした人が割と多かったように思います。

 

ところが、振り返って現在は、レジャーの多様化などの影響もあって、音楽コンテンツの売上はかつてほどではなく、「楽器を手にしたい」と思うきっかけも、昔ほどはなくなってきたのではないでしょうか。

 

そして、そもそもわが国は人口のピークを越え、これから人口はどんどん減っていきます。ということは、当然、ギター人口も同様に減ってくると考えるのが自然です。

 

そうした中、現在、楽器の経験者として生きている私たちが、これからギター人口を維持するために出来ることって、何なんでしょうか。それぞれの立ち位置ごとに、「できること」「しない方がいいこと」があると思うので、時代の変化なども踏まえながら、それらを少し考えてみることにしました。

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Free-PhotosによるPixabayからの画像

 

 

【楽器メーカー】低価格で高品質な初心者向け楽器の開発を!

まず、楽器メーカーの皆さんにお願いしたいことは、とにかく低価格で高品質な楽器のリリースです。

 

初心者向けの低価格楽器は軒並みチープ

確かに、ヘタをすれば1~2万円程度で買えるような初心者向けの楽器は、現在、楽器屋さんでも多々販売されています。

 

しかし、それらのほとんどが、非常にチープな作りになっており、所有する喜びをなかなか見出しにくいようなものになっています。

※それゆえ、逆に上級者の方がそれらを改造・アレンジして「低価格楽器でもここまで出来る!」というアピールをされていたりします。これはこれで面白いですよね。

 

フェンダージャパンは以前と比べると大幅な値上がり…

他方、たとえばかつて私たち世代がお世話になってきた、いわゆる「フェンダージャパン」の楽器については、かつては7~8万円くらいで上質な上位機種を買うことができたものの、現在、それに相当する日本製フェンダーの主力商品は、概ね10万円強程度と、かなりの値上がりをしています。

 

フェンダーからはリーズナブルなメキシコ製の「Player」シリーズが出ており、これはこれで魅力的な商品ではあるのですが、他方で日本製フェンダーがこれだけの値上がりをしている現状では、正直、「ギター、高くなったよなあ」という心理的な印象をぬぐうことができません。

www.tk-guitar.com

 

この心理的な印象は、「買い控え」という形で消費者の購買行動に影響してしまうのではないかという懸念があります。

 

もちろん、原材料費や人件費の値上がり、さらには消費税率の引き上げなど、昔と今とで物価水準に違いが生じる要素があるのは重々承知しています。でも、そうした局面だからこそ、消費者は価格の値上がりに敏感に反応してしまいます。

 

特に5~8万円の価格帯が大事

「無理をして値下げ」では持続可能なものになりませんから、主要メーカーであるフェンダーのみならず、国内外のさまざまな楽器メーカーが創意工夫をこらして、良質な楽器を低価格で手にできるようになればなあ、と思います。

 

特に、5~8万円くらいの価格帯は、フェンダージャパンを筆頭に、かつては「最初の1本目ながらも、クオリティが高いので、後々も長く使える」という楽器が多々ありましたが、現在、このゾーンに魅力的な楽器がそれほど多くありません。ぜひ、各メーカー様におかれましては、この価格帯に力を入れて、楽器を作ってほしいなあ、と思っている次第です。

 

自動車業界も似たような感じかも…

余談ですが、同様に市場の縮小に直面しながら、商品が軒並み高価格化し、ますますの客離れを起こしている業界として、自動車の新車市場が挙げられます。

 

昔より市場が縮小しているのに、価格は昔より高くなって、「そんなものを買う金がどこにあるんだ」と消費者がそっぽを向いてしまう…。

 

ただ一方で、そうした中にあっても、品質を高めながらも低価格を維持しているコンパクトカーや、高付加価値を有している車は、ヒット商品として多くの人に親しまれている現状もあります。

 

5~8万円の価格帯で気を吐いているフェンダーのPlayerシリーズなんかを見ていると、楽器業界でも、同様のことが起こっているのかなあ…なんてことを、思ったりもしています。

 

【楽器屋さん】店員さんも「大人のビジネスマナー」を身につけて

次に、さまざまな魅力的な楽器を、実際に演奏するプレイヤーの皆さんにお届けする上で、非常に重要な役割を果たすのが、楽器屋さんです。

 

関西で言うと、イシバシ楽器さんや島村楽器さんが有名ですが、この他にもさまざまな楽器屋さんが、多くの初心者さんや上級者さんに、さまざまな楽器を販売しています。www.tk-guitar.com

長髪に無精ひげの店員さんは近寄りがたい

しかし…そうした楽器屋さんの店員さんを観察していると、中には、長髪に無精ひげといった、いわゆる「古き良きロックミュージシャンの風貌」をしており、非常に近寄りがたい雰囲気の店員さんが、多々いるように感じます。

 

もちろん、ロックミュージシャンの方も多々出入りする楽器屋さんですので、そうした風貌で接客業務をしていることが、必ずしも否定されるものではないと思います。

 

ただ…そうした風貌が、初心者の方や、おそらく実際に資金を拠出するであろう、ギターに興味を持ったお子さんの保護者の方にスッと受け入れられるかというと、それは、はっきり申し上げて「No」です

 

楽器は高額なお買い物…店員さんもそれにふさわしいビジネスマナーを

一般論として、接客業には、誠実さが感じられるような、清潔感ある服装が求められています。上級者向けの、お店が客を選べるような職人気質の個人経営店ならいざ知らず、少なくとも初心者や若者の窓口になるような大手楽器店の店員さんは、そうした「接客業の基本」に沿うような服装と接客態度である方が、少なくとも初心者さんの「入口のハードル」は下げられるのではないかと考えます。

 

ある程度の楽器ともなると、四捨五入で10万円程度と、決して安くはない買い物を行うことになります。また、本ブログの論旨から見ると余談になりますが、ハイエンド系の楽器やヴィンテージ楽器ともなると、数十万円~場合によっては百万円単位の金銭を動かすことになりますが、そうした高額の商談をするにはふさわしくない服装・接客態度の店員さんが、大手の楽器屋さんであっても散見されるのは事実です。

 

これからの楽器屋の店員さんには、単に「楽器の高度な専門知識を有している」だけでは少し物足りません。初心者さんの「入口のハードル」を下げるとともに、上級者さんの高級楽器の商談にふさわしいビジネスマナーを生み出す点において、楽器屋の店員さんにも「しかるべきビジネスマナー」が求められていると、私は考えます。

 

【プレイヤーの皆さん】簡単で楽しい「弾いてみた」を増やしていこう

私たちの世代は、ギターを買った後、一生懸命練習して、その成果はライブで発表する…というのが一般的でした。もちろん、今もそうした場は健在ですが、現在はもう1つ、違う「発表の場」があります。

 

それが「インターネット」。

 

YouTubeやニコニコ動画への「弾いてみた」動画のアップロードはもちろんですが、最近はTwitterに直接短めの動画をアップして、多くのフォロワーを楽しませてくれています。

 

実際、私もさまざまな方の演奏を見て、笑顔になったり、感心したり、感動したりしています。

 

「弾いてみた」動画はレベルが高い!でも、それが逆に…

ところで、このインターネット上の「発表の場」は、従来型の発表の場であるライブハウス等と比べて、非常にオープンなしくみになっており、数多くの人が動画をアップしています。

 

この結果、「バンドは組まないけど個人演奏スキルが非常に高い人」にも発表の場が生まれ、そうしたハイテク系の「弾いてみた」動画が表舞台に登場し、YouTubeなどの主流になっていきました。ギターであれば超絶早弾き、ベースであれば高速スラップ、ドラムであればツインペダルの手数足数重視系ですね。

 

これらの動画は、非常に素晴らしいですし、エンターテインメント性も高く、見ていて非常に楽しいです。

 

ただ、一方で、こうしたハイテクプレイは、残念ながら初心者さんの羨望の的にこそなれども、彼・彼女たちの「当面の目標」として存在できるかというと、そこは結構微妙なところであるような気がします。

 

「高い山」ではなく「気軽に登れる山」を見てみたい

言うなれば、「すごく高い山の頂点」だけが見えている状態で、その山に登る前にチャレンジしておきたい「初心者向けの山」になるような動画が、今の「弾いてみた」系にはあまり多くないような気がします。こんな高い山ばかり見せられても、「すごいのは分かるけど、自分には無理だ…」となって、山登りそのものをあきらめてしまいかねません。

 

もちろん、チュートリアル系の動画はたくさんありますが、これらはどこまでいっても「チュートリアル」…たとえて言うなら「コンパス」という「道具」なのであって、「憧れの的」…すなわち「ゴール」ではないんですよね。

 

ですので、初心者の方が「まずはこれなら自分でも楽しくマスターできそう」というような「弾いてみた」系の動画が、もっとたくさん増えてくるといいなあ、と私個人は思っています。こうした演奏をこなせるようになることで、少しずつステップを踏み、やがては高い山にチャレンジできるだけの実力が身についていくのだろうと思います。

 

かつては流行りのロックバンドが「身近な山」の役割を

そういえば、振り返ってみると、私たちの世代は、GLAY、LUNA SEA、JUDY AND MARYなど、「極端に難しくないけど、適度な手応えがあり、弾けるようになると楽しくて、それを他人に披露すると、みんな知っていて盛り上がる」というバンドがすごく多かったですよね。

 

「弾いてみた」動画に限らず、商業ベースの音楽シーンにおいても、こうした「ちょうどいい高さの山」が、もっと増えてくるといいな、と願っています。

 

まとめ…時代の変化に対応しつつ、昔ながらの良さを活かしていこう

とまあ、大きく「楽器メーカー」「楽器屋の店員さん」「プレイヤー」の3つの視点から、現在減少傾向にあるギター人口を維持するために、その入口にいる「初心者さん」をどうつなぎとめるか、といった視点で考察を行ってみました。

 

これらは、あくまで私個人の考えでしかなく、各論の中にはさまざまな議論があろうかとは思いますが、1つ、多くの人と共有できる考え方があるとすれば、

 

ギターの楽しさを知らずに人生を送るのは、あまりにもったいない

 

ということであり、それを多くの人に伝えたいという点においては、音楽・楽器を愛するものの間では、異論はないのだろうと思います。

 

だからこそ、「些細なことでギターが嫌いになったり、ギターを弾かなくなったりすることがないようにしたい」というのが、私が今回、この記事を書いた目的です。

 

現在のギター人口が減っていく背景には、

  • ギター業界にあった昔の良さが、時代の潮流の変化とともに失われていったこと
  • 時代が変化しているのに、ギター業界が旧態依然としていること

の、相反する2つの要素があり、それらが「レジャーの多様化」の波を押し返せない要因になっているように思います。

 

これら2つの論点は別に矛盾していることなのではなくて、個別の課題を、それぞれしっかり解決していけば、ギターの入口でつまづく初心者さんを減らして、素晴らしきこの世界に住み続けてもらえるきっかけを作れるのではないか…。

 

私は、そう思っています。