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台風とライブ…中止すべきなのに、なぜ中止できない?

2022年のお盆シーズン、大型の台風8号が西日本を縦断しました。
「ROCK IN JAPAN」は最終日の13日の開催を中止すると発表しました。

死者・行方不明者のほか、各地でけが人が発生するなど、今回も傷跡を残していった台風。思えば、2018年は多くの台風によって西日本は大きな被害を受けたばかり。台風という災害の恐ろしさを、身にしみて痛感したものでした。

さて、こうした台風は、日常生活への影響は言わずもがなですが、ミュージシャン的には、ライブなどの音楽イベントにも大きな影響を与える点が気になるところ。

今回、台風とライブ開催について、考えてみたいと思います。

この記事はこんな人にオススメ
  1. 台風が来ているのにライブが強行されることに違和感がある
  2. なぜ台風の中ライブを強行するのかを知りたい
  3. 「ライブには自己責任で来て下さい」と言われた
  4. ライブ開催と正常性バイアスの関係を教えてほしい
  5. 台風襲来時のライブ開催の是非について冷静に判断したい

 

大雨・暴風・高潮・土砂崩れ…数多くの危険

こんなこと、このブログで今さら言うまでもないことなのですが、台風が直撃すると、そのエリアは、大雨、暴風にさらされることになります。

そして、海に近い場所だと、高潮への懸念が生じますし、山がある場所だと、土砂崩れへの厳重な警戒が必要になります。

こうした台風の危険から身を守るため、台風襲来時には「不要不急の外出を控える」よう、アナウンスがなされるというわけですね。

被害・混乱を未然に防ぐための「計画運休」

このような台風の中、鉄道などの公共交通機関を通常ダイヤのとおりに運行することは不可能です。

ですので、近年、台風の上陸により、公共交通機関への影響が予見できる場合は、早々に予告した上で行う「計画運休」の取組が浸透しつつあります。

公共交通機関が動いていると、人はどうしても移動してしまうもの。ならばいっそ、これを止めてしまうことで、人々が移動できなくなり、たとえば出勤したものの帰宅できない、いわゆる「帰宅難民」の発生を未然に防ぐことができるわけです。

また、人々が移動できなくなることで、集客施設などは従業員の出勤も難しくなりますから、来客の少なさも相まって、「臨時休業」の判断を行いやすくなります。

こうした「計画運休」及びこれに付随する各企業等の休業判断により、災害被害やその二次被害を、かなり軽減することができるようになっています。

「電車が動いていないと不便ではないか!」との声もあるのですが、いくら不便とは言え、それも「命あっての物種」の話。導入当初は、かなり思い切った判断だなあ…と思ったものですが、こうした「安全を最優先に考える取組」は、社会として積極的に許容すべきものであると考えています。

台風襲来時の大原則は「ライブは中止」

こうした、台風の恐ろしさ、そしてその被害を未然に防ぐための「計画運休」の取組などを踏まえ、ミュージシャンの皆さん、イベンターの皆さんは、ライブ開催についてどう向き合い、検討すれば良いか、少し考えてみたいと思います。

といっても、まず最初に申し上げておきたいのは、「ライブは中止」というのが、絶対的な大原則である、ということ。

以下、その理由について検討していきます。

【中止の理由1】来場者・出場者の安全を最優先に考える

言うまでもないことですが、ライブは、来場者、そして出場者が無事に会場へ到着することが、開催の大前提です。

台風襲来時…すなわち、大雨・暴風にさらされ、地域によっては洪水・高潮・土砂災害に警戒しなければならない状況の中、自らの安全ではなく、ライブを優先するという行動は、通常の感性では考えられないことでしょう。

台風襲来が見込まれるときに向かうべきは、「ライブハウス」ではなく「安全な場所」です。そして、もし自宅が安全であるのなら、どこにも出かけず、自宅に待機すべきなのであります。

「自己責任で来て下さい」ほど無責任な主催者の発言はない

ところで、今回の台風襲来時、「ライブを開催しますので、自己責任で来て下さい」(特定回避のため、少し文言を触っています)という趣旨の投稿をTwitterに挙げているライブ主催者がいました。

要は、「もし会場に来るまでの途中に何かがあっても、その判断を自分で行い、その結果生じた自体に対して、自分で責任が取れる人は来て下さい」ということなのでしょう。

多くの取り巻きの皆さんがこの判断を絶賛されていたようですが、私は、これほど無責任な発言はないと思っています。普通であれば、主催者側の社会的責任として、ライブの開催を自粛すべきところ、あえてライブを開催し、さらには来た人に対して「自己責任」を押しつける…。

これ、仮に「自己責任」の名のもとにライブ会場に来ようとしてケガ等をした場合、仮に自分が「自己責任なので仕方ないです」と納得したとしても、ケガをした人の御家族・御友人はもとより、事故の解決にあたらなければならない警察・消防・病院等の関係者にも多大な迷惑がかかります。

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この時代、「自己責任」は「自分ひとりの責任」では済みません。災害被害発生のリスクが高まる中、そうしたところに思いを馳せず「来るなら自己責任」と言い放ってライブを開催する感覚は、どうにも私には理解できません…。

【中止の理由2】計画運休で会場への移動が困難

計画運休の意義は既に述べたとおりですが、このような計画運休が行われている状況にあって、そもそも来場者や出場者がライブハウスまで予定どおりにたどりつくことは困難です。

よもやたどりつけたとして、同様に安全に交通手段を確保した状態で帰宅することも、また同様に困難であるといえるでしょう。

もちろん、自動車で移動することが出来る人であれば、計画運休の影響を受けることなく移動できるのでしょうが、すべての人が車で移動できるわけではありません。

このように、計画運休で移動手段を失っている状況の中で、「ライブを開催します」というのは、はっきり言って、無責任な判断であるといえるでしょう。

【中止の理由3】停電のリスクが高い

これは昨年、台風21号の影響を強く受けた近畿地方で顕在化した問題ですが、台風の被害を強く受けると、停電が発生することがあります。

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この場合、当然、会場の照明はもちろん、各種アンプやキーボード、PA機器などが一切使えなくなってしまいます

そもそも、音楽が鳴らせない以前に、明かりがつかない状況で、ライブハウスのような狭い場所に相当程度の人が滞留している状況は、非常に危険だと言えるでしょう。これに伴う二次被害等が発生しないとも限りません。

台風発生時には、停電に伴うリスクも相当程度に高く、安全にライブが実施できる保証はどこにもなくなってしまうのです。

それでもライブを強行する人が出る…なぜ?

このように、通常の感性・思考回路を持っている人であれば、台風襲来時のライブについては、開催するリスクがあまりにも高すぎるため、残念ながら「中止」という判断を下さざるを得ないというのは、誰でも分かることかと思います。

にもかかわらず、この台風襲来下、そして計画運休実行下においても、ライブを開催しようとしているライブハウス・ミュージシャンの姿が散見されました。

個々の思い、事情は分かるのですが、それでも総じて安易に判断していると考えられるケースが多く、個人的には大変残念に思います。

ではなぜ、この状況下で、ライブを行ってしまうのでしょうか…?

【強行の理由1】ライブをやりたい

これはもう、何の論理性もない話なのですが、一方で感情的にはこれに尽きるのではないでしょうか。

ライブをやりたい」。

この気持ちは、ミュージシャンであれば、誰もが間違いなく強く抱いているもの。そして、そうしたミュージシャンを応援すべく、ライブハウスの運営を行っているオーナー・スタッフ等の皆さんも、同じ思いのはず。

そうした思いの前には、台風など些末な問題。台風なんぞにライブを邪魔されてたまるか…きっと、そういった思いを持っているのでしょう。

論理的には理解できないのですが、一方で私も楽器を手に音楽をやっている身。その気持ち、分からなくはないのです…。

【強行の理由2】正常性バイアス

心理学の用語に「正常性バイアス」というものがあります。

これは何かと言うと、「自分にとって都合の悪い情報・事実を無視したり、過小評価してしまう現象」のことを指します。

もとより人の心というのは、不測の事態においてもある程度理性をもって行動できるように、「これくらいは普通のこと」と自然に解釈できるようにできています。

ところが、これが行きすぎると、自分にとって不都合な真実が明らかになったとき、心の平温を維持する観点から、「まだ大丈夫」「これは何かの間違い」「今回だけは大丈夫」「自分だけは大丈夫」などというふうに思い込んでしまうようになり、これが災害時の的確な判断の妨げになる、というものです。

この「正常性バイアス」の存在は、災害発生時の逃げ遅れ…すなわち被害拡大の要因として指摘され、災害対策の専門家などが非常に危機意識を持っているものです。

さて、この「正常性バイアス」、まさに台風襲来時にライブを開催してしまうミュージシャンの心理状況にも、当てはまってはいないでしょうか

自分が楽しみにしていたライブ。お客さんも来てくれる…。そうした状況の中で、台風が来てしまっている。こういう状況下において、「まだ大丈夫」「今回だけは大丈夫」などという判断のもと、ライブを開催してしまってはいないでしょうか。

もしそうなら、これこそまさに、災害対策の専門家が懸念する「正常性バイアス」の影響なのです。

【強行の理由3】返金等の手続きが面倒

これは小さな問題なのかもしれませんが、仮にライブのチケットを前売りしてしまっている場合、ライブを中止するとチケット代を返金する手続きが必要になってきてしまいます。

特にアマチュア〜インディーズの方の場合、チケットを手売りしてしまっている人もいるでしょうから、これらについて、1件1件、個別に対応しないといけないというのは、地味に面倒なことなのです。

もちろん、この面倒さは、台風という災害の前では、本当に些末な問題ではあるのですが、一方で、前述の「ライブをやりたい気持ち」や「正常性バイアス」などが絡んでくると、この面倒さが、これらの心理状況を強化する方向に働いてしまいます

信じられない!この状況下で路上ライブを行うミュージシャン

ところで、この台風の状況下で、路上ライブを強行した、信じられないミュージシャンがいます。

そのミュージシャンのTwitterの投稿をひもとくと、概ね、次のような流れです。

  • もともとは台風直撃日にライブの予定だったが、中止になった
  • 一方で会場付近まで来ており、自分はライブをする気満々だ
  • 幸い、今は雨風もほとんどない
  • きょうは人が少ないので駅付近の屋根のあるところが空いている
  • ということで、今からここでライブします。良かったら来てね

そうでなくても路上ライブ自体、法令遵守の視点から控えるべきもの

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にもかかわらず、よりによってこの台風直撃の状況下で路上ライブを行うとは…開いた口が塞がりません。台風に警戒し、対応に追われている警察、鉄道事業者、施設管理者に余計な手間をかけさせるという点においても、許されるものではないと考えます。

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もちろん、個人攻撃をするつもりはないので、当該ミュージシャンの名前をここで挙げるつもりはありませんが…こういう行為を批判的に論じる風潮を醸成することで、ミュージシャンの行動規範がより良くなっていくことを願うばかりです。

【まとめ】厄介な正常性バイアス…台風の危険性を理解し、正しく判断を!

このように、台風が来たときの危険性、そしてその危険性を踏まえると、本来、ライブは速やかに中止の判断をすべきことが大原則であること。にもかかわらず、ミュージシャンは「ライブをやりたい」という気持ちや、心理学でいうところの「正常性バイアス」のせいで、そんな危険な状況であってもライブを開催してしまう場合がある…ということを、ここまで確認してきました。

ライブを予定どおり開催したいというミュージシャンの方の気持ち、私もよく分かります。仮に私も、自分が出場予定のライブの日に、台風が直撃してしまったら、絶望的な気分になってしまうでしょう。

でも、もしミュージシャンの方が、一番大事にしているものが「音楽をやっている自分」ではなく「音楽をやっている自分の周りにいるファン、仲間、家族」であるというのなら…

本当に正しい判断は「勇気を持って、ライブを中止することなのです。

自分の気持ちに負けず、そして正常性バイアスと正しく向き合って、今後の災害の際には、どうか賢明な判断がなされますよう、心より願っています。

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