フェンダーのジャズベース。おそらく、世界でもっともスタンダードなベースと言って良いでしょう。
そのジャズベースには、本当に随分と長い歴史があり、その中で各年代のものが「ヴィンテージ」として今なお高い人気を誇っており、当時のヴィンテージスペックを再現したベースも多くのベーシストに親しまれています。
今回、そのフェンダーのジャズベースについて、年代ごとの特徴をひもといてみようと思います。
初代ジャズベースは1960年!2軸2連ノブが印象的
プレシジョンベースの上級グレードとして、フェンダーが1960年中頃に発売したのが、ジャズベースの始まりです。
基本的なボディシェイプなどの設計思想は、プレシジョンベースを踏襲していました。アルダーボディ、メイプルネック、ローズウッド指板などもプレシジョンベースと共通です。
一方で、2つのピックアップを持ち、これらをミックスして音を作れるというのが、プレベとの大きな違いでした。リアのピックアップが作り出す、高域に特徴のある硬い音が、フロントの音とミックスされることによって生まれるサウンド。これこそが、ジャズベース最大のアイデンティティであると言えるでしょう。
また、プレベよりも一回り細いグリップも大きな特徴の1つ。現在でも、手が小さいベーシストにとっては、プレベよりジャズベの方が扱いやすいわけですが、その特徴は、まさにこの時点において、既に完成していたわけなのです。
さて、そんな特徴的な2つのピックアップのコントロールですが、実は最初期のジャズベースでは、2軸2連型のノブを採用し、2ボリューム・2トーンの形をとっていました。現在、市販されているジャズベースは3ノブで、2ボリューム・1トーンですので、ここは最初期ジャズベースの大きな特徴であるといえるでしょう。
ちなみに、当時の2軸2連型ノブを現在採用しているベースといえば、1961年製ジャズベースを再現したと言われる、フリーモデルが有名ですね。
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概ね1962年ごろから3ノブ仕様に
そして、おおむね1962年ごろ(厳密には1961年後半から少しずつ)から、前述の特徴的な2軸2連型のノブから、現在のスタンダードになっている、2ボリューム・1トーンの3連ノブに仕様が変わっています。
その背景には「ノブが多すぎて使いにくい」などの声があったように聞いていますが…個人的には、2軸2連型の方が好きなんですけどね。
ちなみに、当時の仕様を再現することで高い人気があったフェンダーUSAの「アメリカンヴィンテージ」シリーズでは、この1962年仕様が長きにわたって定番になっていました。
おそらく、多くの人が想像する「1960年代のジャズベ」といったら、この1962年仕様なんでしょうね。
サンバースト塗装のアルダーボディ、メイプルネック、ローズウッド指板…。これぞ、伝統的なジャズベースの仕様です。
ちなみにこの後、概ね1966年ごろまで、カラーリングの追加やマッチングヘッドカラーの採用のほか、ごく細かな仕様の変更などがあるものの、基本的にはこの1962年のスタイルを踏襲し続けています。
ブロックポジションマークが採用された1966年モデル
そうしたジャズベースですが、ルックス的に1966年は大きな転換点を迎えます。
それは、「ブロックポジションマークの採用」です。
これまでのドットポジションマークから、「上級モデルにふさわしい装飾を」ということで採用された、このブロックポジションは、以降のジャズベースの基本となっていきます。
あと、ルックス的には細かいところではありますが、ペグがパドルペグ…いわゆる「丸ペグ」になっています。これはこの当時のフェンダーのベースは共通の仕様変更でして、ハマ・オカモト氏のシグネチャーモデルで採用されたことで、広く一般に知られるようになった、マニアックな1960年代後半ベースの特徴ですね。
ちなみに、ブロックポジションと丸ペグの採用以外は、大きな仕様変更はなく、「1960年代」のサウンドをしっかり維持しています。「ブロックポジションといえば1970年代」というイメージを持つ人も多いようですが、実は1960年代にもあったんですね。
もひとつちなみに、あの亀田誠治さんが使用しているのは、この1966年製のジャズベースです。1984年に購入し、こまめなメンテナンスを行いながら、今でも現役で使われています。あの圧倒的な存在感、見ているだけで惚れ惚れしますよね。
CBSロゴが採用された1968年
そして、1968年のジャズベース。サウンド面に影響を与える大きな仕様変更はないのですが、1点、フェンダーの歴史を語る上で外せない、デザイン面での変更があります。
それは、「CBSロゴの採用」です。
フェンダー社は、1965年にCBS社に売却され、いったん法人としては存在しなくなるわけですが、そのタイミングとおおむね時を一にして変更されたことから、この黒文字の大きなロゴは「CBSロゴ」と呼ばれています。
昔ながらのロゴが好きな人もいれば、このCBSロゴが好きな人もいるので、このあたりは好みかなあ、と思いますが、こうしたところにフェンダーの歴史が表れており、個人的には大変興味深く思います。
1973年…いわゆる「70年代ジャズベ」の完成
1970年代に入ると、ジャズベースの仕様が、少しずつ変化してきます。
もっとも特徴的なのが、アッシュボディの採用。アルダーボディよりも重く、引き締まったサウンドが印象的です。そして、ピックアップの位置が、従来よりも約1cm程度、ブリッジ側に移動することになります。これにより、サウンドがより明るく、そして硬くなります。
また、ブロックポジションやネックバインディングなど、ルックス面で1960年代後半から少しずつ変わってきた特徴も健在。
そうした70年代のジャズベースを象徴するのが、木目がそのまま出た、ナチュラルフィニッシュ。
これが、一般に知られる「70年代ジャズベース」です。
マーカス・ミラーのスラップサウンドも、この70年代ジャズベースで奏でられており、60年代ジャズベースとはまた異なるサウンドを求める層に、今でも大変な人気がありますし、アトリエZのM#245のように、70年代ジャズベースへのリスペクトを感じさせるモダンなベースもたくさん生まれてきています。
また、日本製フェンダーでも、当時のジャズベースを再現するようなコンセプトのベースがリリースされています。価格も比較的お手頃ですが、「アッシュメイプル」はしっかり踏襲されており、当時の雰囲気を気軽に楽しむという意味においては、大変オススメのベースです。
その後…60年代・70年代を想起させるリイシューモデルの登場
トラディショナルなジャズベースの仕様変更は、いったんこの70年代までで完成し、これ以降は、60年代や70年代のジャズベースの特徴を再現したリイシューモデルが、日本製、USA製のどちらでも主流になっていきました。
日本製だと、旧フェンダージャパンの主力ラインナップはまさにそうでしたし、現在のTraditionalシリーズも同様。USA製では、アメリカンヴィンテージ、そしてその後継となるアメリカンオリジナルなどがこの流れにあります。

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現在も進化を続けるジャズベース…あなたはどれがお好み?
一方で、ジャズベースの進化は止まることなく、現在もアメリカン・プロフェッショナルシリーズやアメリカン・エリートシリーズなど、トラディショナルなジャズベースの伝統を意識しつつも、それにとらわれすぎることなく、これを進化させる取組が継続されています。
ヴィンテージ楽器、それを再現した楽器、そして過去にとらわれることなく進化を続ける楽器…。
ジャズベースには、これらがすべて用意されています。
ぜひ、さまざまなジャズベースを弾き比べ、あなたにとっての最良の一本が見つかることを、願ってやみません。