本日は、少し趣向を変えまして、ソニーの定番モニターヘッドホン、「MDR-CD900ST」 についてレビューしてみようと思います。

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- メディア: エレクトロニクス
- 購入: 10人 クリック: 273回
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- モニターヘッドホンの「業界標準」
- サウンドは…モニターらしいフラットさ
- モニターらしい「解像度の高さ」も
- モニターヘッドホンらしさはリスニング時のデメリットにも…
- あくまで「モニターヘッドホン」としての評価を
- 良くも悪くも「業務用」…そこをどう取るか
- まとめ…「業務用」モニターヘッドホンとして
- 【おまけ】後継機種の情報が出ています!
モニターヘッドホンの「業界標準」
既にご存じの方も多いとは思いますが、念のため。この「MDR-CD900ST」、1989年と、相当に古い時期に発売されたものですが、音楽等を制作する際のモニターヘッドホンの定番品として、この2019年に至るまで、ずっと「業界標準」として存在し続けています。
レコーディング風景の写真などを見ると、ミュージシャンの方々は、この「赤い帯」が印象的なヘッドホンを着用している様子がおなじみかと思いますが、そのヘッドホンがまさにこれ、「MDR-CD900ST」なのです。
音響業界でも技術革新が進んでいく中、このMDR-CD900STについては、未だにスタンダードとしての地位を保ち続けている…。もはや、モニターヘッドホン業界の「王者」といっても差し支えないほどの、圧倒的な存在感です。
サウンドは…モニターらしいフラットさ
さて、そんなMDR-CD900STを視聴してみます。ヘッドホンの視聴レビューというのは、音源を紹介することができないので、どうしても言葉による定性的な評価になってしまいますが…。
まず、基本的な特性は、モニターヘッドホンという性質上、ごく当たり前ですが、きわめてフラットです。
ただ、昨今の一般的なリスニング向けヘッドホン・イヤホンは、どちらかというと低音をしっかり鳴らすような設計になっていることが多いため、それと比較すると、相対的に高域を強いと感じるかもしれません。といっても、これはあくまで「相対的な印象」である点に留意が必要で、モニターヘッドホンとしてはきわめて標準的なレベルです。
モニターらしい「解像度の高さ」も
そして、フラットさと並ぶ、このMDR-CD900STのもう1つの特徴が「解像度の高さ」。
モニターヘッドホンは、全音域を等しくフラットに鳴らすことで、ミキシングの標準的な仕上がりをチェックすると当時に、細かい部分を正確に鳴らすことにより、音楽の中に混じったノイズを検出するといった意義があります。
そういった意味において、このMDR-CD900STは、圧倒的な解像度の高さによって、楽曲制作時のミステイクが見つけやすくなっており、まさにモニターヘッドホンに求められる特徴を、高いレベルでクリアできています。
モニターヘッドホンらしさはリスニング時のデメリットにも…
ただし、前述の「フラットさ」と「解像度の高さ」というのは、モニターヘッドホンとして使おうとしたときには良いのですが、一方で
- フラットさを狙ったがゆえに生じる高音の相対的なキンキンさ
- 解像度の高さが生み出す情報量の多さに起因する聴き疲れ
といったデメリットも同時に併せ持っており、このデメリットがあるがゆえに、リスニング用として使うのは少しつらいところがあります。
そして、このMDR-CD900STについては、モニターヘッドホンとしてのメリットの大きさが、そのままデメリットの大きさにも直結してくるという構図になっているのです。
あくまで「モニターヘッドホン」としての評価を
つまり、MDR-CD900STは、はっきり言って、リスニング用ヘッドホンとしては不適、ということになってきます。
そう、あくまでMDR-CD900STは「モニターに特化したヘッドホン」。
この前提に立たないと、このヘッドホンの良さが正しく理解できなくなってしまいます。たまにネットで、このMDR-CD900STについて酷評しているブログ等を見ますが、それらの中には、前提となる立ち位置が違うがゆえに生じる誤解も散見されるなあ…という印象です。
良くも悪くも「業務用」…そこをどう取るか
そして、このヘッドホンは、音響特性以外にも、徹底的に「業務用」のにおいを感じさせてくれるファクターがあります。
側圧の優しさ
まず、これは単純にメリットしかないのですが、側圧が非常に優しく、長時間の着用もそれほど苦になりません。他のモニターヘッドホンの中には、結構側圧が強いものもありますので、このあたりはさすがソニー、といったところです。
さすが業界標準、アフターパーツが豊富
また、「業務用」であり、「業界標準」として多くの人に使われているがゆえに、アフターパーツも豊富です。強者の中には改造にチャレンジしている方もいらっしゃるなど、さまざまな使われ方をしていることが伺えます。
業務用ゆえの味気なさも…
一方で、ケーブルについてはカールケーブルではないストレートケーブルだったり、またプラグも変換なしの標準プラグのみだったりと、業務用であるがゆえの味気なさを感じる向きがあるのも事実です。
また、箱もきわめて味気ない、普通の段ボールだったりします。いわゆる「開封の儀」にわくわくする感じも、あまりありません。とはいえ、そのあたりの味気なさも含めて「プロ仕様の業務用」という感じもしますよね。
まとめ…「業務用」モニターヘッドホンとして
ここまで、このMDR-CD900STについて、音響的特性面、そして使い勝手の両面から、簡単にレビューを行ってきました。
「業務用」の「モニターヘッドホン」として見る限りにおいて、このMDR-CD900STは、相当に優秀な一品です。長きにわたって、業界標準として親しまれ、この業界の「王者」として君臨できていることも、納得のクオリティであることは、疑いようがありません。
一方で、「業務用」の「モニターヘッドホン」であるということを忘れ、普通のヘッドホンという形で評価をしようとすると、業務用であるがゆえの特性が、急にネガティブなポイントとして見えてきてしまうのも、また事実。
このヘッドホンが何を目指しているか…。ヘッドホンの購入を検討しようとしたときは、まずは、そこを正しく理解すること。その上で、このMDR-CD900STを検討の俎上に載せれば、きっと素敵な買い物ができるのではないでしょうか。
【おまけ】後継機種の情報が出ています!
基本的なコンセプトはMDR-CD900STをそのままに、ハイレゾ対応や着脱式ケーブルの採用など、より現代的に進化してきたものと思われます。
発売は8月23日とのこと。これは楽しみ…ですが、一方で価格は定価ベースで31,500円とややお高め。
この価格なら、実売ベースで2万円を切るMDR-CD900STとの棲み分けもできそうな気がしますね。

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- メディア: エレクトロニクス
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