ギタリスト・かとうたかしの音楽ブログ

楽器レビューのほか、音楽をテーマにブログを書いています。

【レビュー】Sago Stem Ove Sagoの廉価版というよりは「上質なベース」として。

本日は、兵庫県尼崎市の楽器工房・Sagoが新しく設立したブランド「Stem」からリリースされている同社の主力商品「Ove」についてレビューしてみようと思います。

 

 

Sagoの新たなブランド・Stem

兵庫県尼崎市に拠点を構える楽器工房のSago。高い技術力と個性的なアイデア、そして流麗なデザインで、プロからアマチュアまで、多くのファンを抱える、非常に人気あるメーカーです。

 

そんなSagoは、基本的にオーダーメイドを主力としているのですが、他のオーダーメイド系楽器と比べるとマシとはいえ、それでも30万円程度の金額は覚悟しないといけないところでした。

 

そこで、少しでもSagoの魅力を多くの人に伝えたい、との願いのもとリリースされたのが、スチューデントブランドの「Seed」。このブランドから出ている、ギターの「Rutile」、ベースの「J4 Tabuchi Custom」などは、いずれも6~8万円程度という価格帯ながら、Sagoのアイデアがぎっしり詰まっており、非常に高い評価を得ています。

 

www.tk-guitar.com

www.tk-guitar.com

 

今回ご紹介する「Stem」は、そんな「Sago」と「Seed」の間を埋めるブランドという位置づけ。

 

「Seed」は「種」という意味ですが、「Stem」は「幹」。「【種】から【幹】を伸ばし成長する」という意味が込められているそうです。

 

StemブランドのOve

さて、そんなStemブランドから最初にリリースされたのは、Sagoブランドの主力ベースである「Ove

 

SagoのOveについては、既にレビュー記事を書かせていただいたことがあります。

www.tk-guitar.com

 

このSago Oveを基本に、少し価格が下がるようにアレンジされたのが、今回のStem Oveということになります。

 

Stem Oveの特徴…Sagoとの違いは?

このStem Oveは、アルダーボディのメイプルネック、ローズウッド指板という、材の選定的には割とスタンダードな形になっています。

ちなみに、Sago Oveもおおむね同様なのですが、こちらはボディ材のアルダーがサーモウッド加工されているのが通常ですので、その点においてStemとの相違が生じています。

 

そして、基本的なボディシェイプは、SagoもOveも同じで、ジャズベースを基調としつつ、形状を少し見直すとともに、21フレットまで用意されているので、ハイポジションでのプレイがしやすいという特徴があります。このあたりのプレイアビリティの良さは、SagoもStemも同じですね。

 

なお、コストの多くを占める木材加工について、Sagoは自前でやっているところ、Stemは外注をかけているんだとか。これがコストカットに大きく効いているそうです。

 

ピックアップは、L(x)シリーズの「L(x)LJB1」が2機搭載。こちらはSagoのモデルだと上位の「L(x)JB4」が搭載されていますので、ここもコストカットポイントになっている様子。とはいえ、「L(x)LJB1」もかなりパワフルで上質なサウンドを生み出せるピックアップです。

 

ちなみに、ピックアップは木製のピックアップカバーに覆われており、これがOveの見た目の特徴にもなっています。ここはSagoもStemも一緒ですね。

 

パッシブのStemとアクティブのSago

さて、StemとSagoの設計上の大きな違いはどこかというと、アクティブかパッシブか、というところ

 

Stemの場合、パッシブ設計になっている一方で、パワーが欲しいときにはミニスイッチをオンにすることで2つのピックアップをシリーズ接続し、ハムバッカー化することができます。

 

一方で、Sagoの場合は、アクティブ・パッシブを切り替えができるようになっています。Sagoの場合は、ボディがサーモウッドということもあり、少し軽量化が図られているところをアクティブでカバーする、というような考え方もあるように感じますが、他方でStemの方は一般的なアルダーのベースなので、ここは廉価か否か、というよりは設計思想の違いと理解した方が良いかもしれません。

 

Sagoの十八番・ラップ塗装はStemでも!

そして、このOveも含め、多くのSagoの楽器で採用されている、特徴的なルックスを生み出しているのが、ラップ塗装。塗装時にサランラップを楽器に貼り付けることによってできる模様が、非常に個性的なカラーリングを生み出す、という、アレです。

 

このラップ塗装を、Stem Oveでは選択することができます。通常ラインナップの新ラッカー塗装に比べて1万円高になりますが、これ、Sagoの通常オーダーメイドで追加すると1万円ではとても足りません。ラップ塗装に興味のある方には、特にオススメです。

 

価格が悩ましい…25万円あれば、SagoのOveも射程圏内

そんな、非常に魅力的なStem Oveなのですが、実はこのベースを検討する際に非常に悩ましいのが、価格です。

 

このStem Ove、「SagoとSeedの間」という位置づけになっており、仮にSagoを30万円、Seedを8万円とするのなら、Stemは概ね15~20万円くらいで来るのかな、と想像していたところでした。

 

ところが実際の販売価格は、おおむね25万円程度

 

ベースを買うのに25万円を出せる人なら、もう少し頑張って、最上位ブランドの「Sago」を買うことにしよう…と考える人も、相当程度に多いのではないでしょうか。

 

まとめ…「お求めやすいSago」ではなく、上質な国産ベースです

このように、非常に魅力的なベースでありながら、価格に一瞬たじろいでしまうのが、Stem Ove。

 

もちろん、前述のように、SagoとStemではボディシェイプを一にしながらも、音作りの面で異なるところがあるので、あえてパッシブのStemを求めるという選択肢もあり得るとは思うのですが…少なくとも、この価格だと、「お求めやすい」とは言いがたいのが実情だと思います。

 

ただしそれは、あくまで「SagoとSeedの間」という視点で見る限りにおいて、です。

 

この価格帯だと、おそらくAtelier ZやMoonなどのベースがライバルになってくるかとは思いますが、それらと比較すると、弾きやすいボディシェイプや上質なL(x)ピックアップのサウンドといった点において、Stem Oveには、非常に大きな強みを感じます。

 

そして、Sagoの魅力であるラップ塗装、これを20万円台のベースで手にできるというのは、非常に魅力的です。このルックスの個性は、なかなか他のメーカーでは出せません。

 

弾きやすさ、上質なサウンド、ラップ塗装が生み出すルックスの個性…ライブ派のベーシストにとっては、非常に心強い特徴がてんこ盛りなんです。

 

ところが、こうしたStem Oveの強みも、「SagoとSeedの間」というところにとらわれると、価格が妙に気になってしまい、このベースの正しい姿が見えません。

 

Stem Oveは、決して「Sagoの廉価版」ではなく。あくまで「20万円台の上質な国産ベース」。この視点に立つことで、正しくこのベースを評価できる。私はそう思います。そして、そこを正しく理解すれば、とっても素敵な楽器なんです。

 

ぜひぜひ、多くの人にこのベースの良さを、味わっていただきたいと思います。