ギタリスト・かとうたかこの音楽ブログ

楽器レビューのほか、音楽をテーマにブログを書いています。

「どうした?Gibson」最近のギブソンに存在感がない4つの理由

最近、楽器屋さんを回っていたり、あるいはネットで楽器関係の記事を見ていると、とにかく目につくのはフェンダーのギター・ベース・アンプのものが中心です。

 

実際、当ブログも、気がつけばフェンダーの楽器に関する記事が多くなっています。

 

一方で、フェンダーと並ぶ、もう1つのギターブランドの雄、ギブソンの楽器が、最近あまり話題になっていないというか、印象が薄くなってしまっているような気がします。

 

なぜなんでしょう…。少し、考えてみたいと思います。

 

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フェンダーとギブソン

言うまでもなく、ギブソンといえば、フェンダーと肩を並べるギターブランドです。

 

エレキギターの代表とされるモデルといえば、フェンダーのストラトキャスターと、ギブソンのレスポール。

 

最初に買うギターは、ストラトかレスポールか、どちらにしよう」とか「ストラトかレスポか、どっちが好き?」とか、「フェンダー派?ギブソン派?」とかいうような議論は、一昔前では、ギターキッズの間では、まさに定番になっていたような話のはずでした。

 

ギブソンのギターが店頭で目立たない?

そんな両雄、フェンダーとギブソン。

 

ところが最近、楽器屋さんにいくと、どうもフェンダーの楽器が目立つところに置かれていたり、ポスターやPOPなどで顧客へのPRをバッチリ行えていたりする一方で、ギブソンの方はというと、楽器屋さんでの展示はなされてはいるものの、フェンダーのような華やかさがありません

 

大型店に行くと、ギブソンの上級モデルが所狭しと展示されていて、圧倒的な存在感こそ放てているものの、それはどちらかというとマニア向けの品揃えであり、一般的な顧客に対してギブソンのギターを訴求できているかというと、そうではないように思えてしまいます。

 

ギブソンの存在感が薄くなっている理由…

言うまでもなく、今でもギブソンのギターは、レスポールもSGもフライングVも、素晴らしいものばかりです。当ブログでも、いくつか、レビューを書かせていただいております。

www.tk-guitar.com

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でも、そういったギターが、どうしてもフェンダーの影に隠れてしまっている…。なぜなのでしょうか。少し、考察してみたいと思います。

 

【理由1】フェンダーのマーケティング戦略が強すぎる 

まず、これはギブソンがどうのこうの、という話ではないのですが、ライバル・フェンダーのマーケティングがあまりに強力すぎる、という点が考えられます。

 

ここ数年、フェンダーは商品ラインナップが非常に分かりやすくなった上、そのラインナップの中で新製品を出すと、ギターマガジン等の雑誌記事やデジマートなどのウェブ記事などで特集記事が組まれるなど、メディアとタッグを組んだ、強力な情報発信を行っています。

 

また、楽器屋さんでもクールなポスターを張り出したり、YouTubeで楽器の魅力が伝わる動画を配信していたり、国内外の著名なアーティストとコラボをしたりするなどして、「フェンダー」ブランドを一層高める取組を強力に推進しています。

 

一方のギブソンですが、ここまでマーケティング戦略に力を入れている様子は、正直、あまり感じられません

 

「マーケティングなんて楽器の話に関係ないじゃん」という話もあるかもしれませんが、楽器はエンドユーザーに届いてこその世界。どんなに優れた楽器であっても、その楽器を顧客が「買いたい」と思わなければ、意味がないのです。

 

【理由2】ギブソン社の経営状況が苦しい

もともと米ギブソン社は、マンドリン製作から始まり、アコースティックギター、エレキギター等を製作するようになる形で事業を拡大してきましたが、その後、音響事業などに事業を多角化したものの、これらの業績は芳しくなく、会社の経営を圧迫するような形になってしまっていました。

 

加えて、エレキギター人口の減少などもあって、会社は経営危機を迎え、その結果、2018年には、アメリカの連邦破産法第11章の適用を受け、債務整理を行いながら、経営の立て直しを図ることになりました。

 

ちなみに、アメリカの「連邦破産法第11章」は、名称こそ「破産」となっているものの、事業の継続が可能になっているなど、内容は日本の民事再生法に近いものです。「破産=倒産」と安易に解釈されがちですが、ここは誤解のなきように…。

 

それはさておき、米ギブソン社の事業の立て直しは、不採算事業からの撤退を行うなどを通じて、2018年中に経営再建計画を終え、一応、一段落したことになります。

 

とはいえ、そのことをもって、ただちに経営状況にゆとりが生じるわけではありません。これは個人的な推測ですが、こうした財務状況の中では、なかなかマーケティングの方に経営資源を積極投入することが難しい状況にあります。

 

ましてや、現在の日本におけるギブソンギターの取扱いについては、かつて山野楽器が輸入代理店を行っていた時代とは異なり、米ギブソン社が直接出資して設立された「ギブソン・ジャパン」が担っている時代。どうしても親会社の経営状況が気になる体制です。

 

貧すれば鈍する」。おそらく、そういった「企業体力の差」が、フェンダーとギブソンの経営戦略の差になってしまっているのかな…と思ってしまいます。

 

【理由3】10万円前後の価格帯に魅力的な商品が少ない

最初の1本目から、買い換えの2本目、さらにはサブの楽器として、非常にニーズが高い楽器の価格帯が、10万円前後のゾーン

 

この、10万円前後の価格帯において、ライバル・フェンダーは、「Made in Japan」と呼ばれる、日本製の高品質な楽器を多々投入しています。フェンダーであれば、この価格帯で、ちゃんとした「フェンダーのストラト、テレキャス」が買える、というわけなのです。

 

「え、それって要は昔のフェンダージャパンでしょ?」という声が聞こえてきそうですが、そこはフェンダー、巧みなマーケティング戦略のおかげで、そのイメージは払拭できているように感じます。

 

一方のギブソンはどうかというと、実はこの価格帯に、本家USA製の楽器が存在しています。一見、「おお、すごい!」と思ってしまうのですが、やはりこれ、どうしても無理してコストカットしているように感じられる箇所が散見され、工業製品としてのクオリティについては、正直、日本製フェンダーに及ばないと感じられます。

 

本来、本家ギブソンのサウンドをこの価格で感じられるのは、かなり魅力的だと思うのですが、一方で、そうした「詰めの甘さ」が、マーケティング戦略の弱さと相まって、ユーザーに「微妙」と評価されてしまう要因になる…。

 

なんとも、もったいない話です。

 

【理由4】低価格帯では「エピフォン」になってしまう

レスポール、SGなどのギブソンの各種ギターについて、初心者向けの低価格モデルはギブソンブランドではなく、エピフォンブランドになってしまいます。

 

もちろん、エピフォンブランドのレスポール等は、価格の割にはしっかりしたギターだということで、決して評価は低くありません。

www.tk-guitar.com

 

ただ、「Gibson」のロゴがヘッドに冠されていないことに一抹のさみしさを覚えることに加え、ヘッドの形状もギブソンのような、エッジの効いたシェイプではなく、中心を頂点に左右に下がっていく形。(一部界隈では、品のないあだ名がつけられていますが、私の口からそれを言う気にはなりません…)

 

それらのせいで、「本家ギブソンと比べると、一段も二段も下」というふうに見られてしまっています。なんとももったいない話です。

 

この点、フェンダーの初心者向けモデル「Player」シリーズは、初心者向けでありながら、しっかりフェンダーのロゴが冠され、上位モデルとほぼ同様のシェイプをしており、所有欲がいたずらに下がることはありません。(それよりさらに下のラインナップとして、スクワイアシリーズもありますけどね)

 

初心者にも「本物のブランド」を持たせられるフェンダーと、「下位ブランド」だと認識させてしまうギブソン。おそらくギブソン的には「上位ブランドのイメージを守るための戦略」という考え方があるのでしょうが、では初心者向けギターにもきちんとしたロゴを付けさせているフェンダーがブランドイメージを毀損しているかというと、そこはむしろ逆。

 

この点も、マーケティング戦略的にミスっている印象が否めません。もったいない…。

 

【まとめ】頑張れ、ギブソン!

このように、現在のギブソンが存在感を失っている理由を、ライバルであり、そして現在強力な存在感を放っているフェンダーと比較しながら、4点、整理してみました。

 

この記事では、フェンダーのサウンドとギブソンのサウンドの差には一切注目することなく、あくまで「マーケティング戦略」や「経営状況」などの、ビジネス的な視点にターゲットを絞って考察を行っています。

 

言うまでもなく、ギブソンのギターは、本来、素晴らしいものです。あの色気あるルックス、そしてハムバッカーやP-90の、温かくて太いサウンドは、本来、もっと多くの人を魅了できるはず。

 

しかし、そうしたギブソンの魅力が、もしマーケティング戦略等の、「楽器の中身」以前のところで失われているとすれば、それは、あまりにもったいないと思います。

 

どうか、ギブソンが再びフェンダーと肩を並べ、再び伝統的なメーカー同士として、切磋琢磨できるように、願ってやみません。

 

私も、心から、応援しています…!

 

頑張って、ギブソン